生活習慣病

生活習慣病のイメージ画像

これまでの長い期間に渡る生活習慣(偏食・過食、運動不足、喫煙、飲酒、過剰なストレス 等)がきっかけとなって発症する病気のことを総称して生活習慣病と言います。一般の方々にもよく知られている生活習慣病としては、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などがあります。

これらの疾患はいずれも発症初期には自覚症状が現れにくく、病状を進行させやすいという特徴があります。放置すると脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脚の血行障害(閉塞性動脈硬化症)など重い合併症を発症し、生命に影響することもあります。

自覚症状が現れにくいため、発見には健診などでの定期的な確認が必要です。生活習慣病に関係する数値(血圧、血糖値、LDL・HDLコレステロール値、中性脂肪値、血清尿酸値 等)の異常を指摘された場合は、自覚症状がなくても一度当院をご受診ください。

なお、当院では管理栄養士による栄養指導を受けていただくことが可能です。皆様それぞれの状況に合わせた食事療法のお話ができますので、ぜひ積極的にご活用ください。

メタボリックシンドローム

また生活習慣病に罹患していなくてもメタボリックシンドローム(通称:メタボ)であると診断された方は予防や治療の対象となります。この場合、内臓脂肪型肥満の方で、高血糖、高血圧、脂質代謝異常のうち、2つ以上が該当するとメタボリックシンドロームと診断されます。具体的には、以下の表の通りです。

メタボリックシンドロームの診断基準

  1. 内蔵脂肪型肥満である
    おへその高さで計測する腹囲が、男性85cm以上、女性90cm以上
  2. 以下の3項目のうち、2つ以上の項目が当てはまる
脂質
血液検査で、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上、またはHDLコレステロールが40mg/dl未満
血圧
収縮期血圧(最高血圧)が130 mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が85mmHg以上
血糖
空腹時血糖が110mg/dl以上

メタボリックシンドロームと判定された場合、糖尿病や高血圧等の生活習慣病を発症していなくても動脈硬化を招きやすくなります。これによって、脳血管障害(脳梗塞、脳出血 等)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの重篤な疾患を発症させるリスクが高くなります。したがって生活習慣病の患者様と同等の治療や予防対策が必要となるのです。

高血圧症

血圧の数値が慢性的に高い状態にあると判定されると高血圧症と診断されます。具体的には、外来時の血圧測定で、収縮期血圧(最高血圧)が140 mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上の場合になります(日本高血圧学会)。

高血圧のタイプとしては、原因がはっきり特定できない本態性高血圧と病気や薬剤の影響で発症する二次性高血圧があります。前者は、全高血圧患者様の9割を占めるとされ、原因不明とされていますが、遺伝的要因や日頃の生活習慣(塩分の過剰摂取、過食、運動不足、喫煙、飲酒、過剰なストレス 等)が影響しているのではないかと言われています。

高血圧は自覚症状が現れにくい病気です。しかし自覚症状がなくても、血管に強い圧がかかることで血管壁を傷つけ、その圧に耐えようと血管は肥厚化していきます。これが動脈硬化を促進させ、血管内部は脆弱化していきます。それでも放置を続け、血管狭窄による血流悪化、血管閉塞が起きると、脳血管障害(脳梗塞、脳出血 等)、心臓病(心筋梗塞、心不全 等)、腎臓病(腎硬化症、腎不全)などの合併症が引き起こされます。

治療について

治療の目的は、血圧をコントロールし合併症の予防や進行を抑えることです。精査の結果、高血圧の原因となる疾患が認められた場合はそちらの治療を行います。本態性高血圧の場合、まず食事療法(1日の塩分摂取量を6g未満、栄養バランスのとれた食事、食べ過ぎないためのカロリーコントロール 等)や運動療法(息が弾む程度の有酸素運動を1日30分程度)を行いながら血圧の経過を観察します。それだけでは血圧が下がらない場合には併行して薬物療法(降圧剤)も行います。
血圧の状況を把握するためには家庭血圧の測定が非常に重要です。患者様のご協力をよろしくお願いいたします。

糖尿病

血液中に含まれるブドウ糖の濃度を数値化したのが血糖値です。この数値が基準値を超えて慢性的に上昇したままの状態を糖尿病と言います。

ブドウ糖は脳や体のエネルギー源となるもので、細胞に取り込まれることでエネルギーとなっていきます。ただその際に膵臓から分泌されるホルモンの一種であるインスリンの働きが必要となります。このインスリンが何らかの原因で分泌が十分でなくなったり効きづらくなったりするとブドウ糖が細胞に取り込まれず、血液中に取り残されたままとなるので、血糖値が慢性的に上昇したままとなります。これが糖尿病発症のメカニズムです。

診断基準に関しては、空腹時血糖値が126mg/dL以上、もしくは経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値や随時血糖値が200 mg/dL以上の場合とされています。1回の検査でこれらに該当すると「糖尿病型」と判定され、再度検査をして同じ結果であれば糖尿病と診断されます。
また、糖尿病の診断や病勢コントロールの指標にHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)値も用いられます。HbA1cは採血前1~2カ月の血糖値を反映するとされています。正常値は5.5%以下で、6.5%以上の場合には糖尿病である可能性が高いと考えられています。

糖尿病のタイプと合併症

糖尿病のタイプとしては、大きく1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。インスリンを作る膵臓のβ細胞が自己免疫反応などによって破壊され、インスリンがほぼ分泌されなくなり、高血糖が引き起こされます。2型糖尿病は、遺伝的要因や日頃の生活習慣(過食、運動不足、飲酒、喫煙、ストレス 等)などが原因で発症すると考えられています。日本人の全糖尿病患者様の9割以上が2型糖尿病と言われています。上記以外にも、妊娠中のホルモンの働きによって高血糖状態になる妊娠糖尿病、別の病気の罹患や薬剤がきっかけになる二次性糖尿病もあります。

発症初期から自覚症状が現れることは少ないとされ、ある程度病状が進行すると、頻尿・多尿、異常な喉の渇き・多飲、全身の倦怠感、体重減少などが現れます。さらに進行すると、血管障害が起きると言われています。とくに細小血管が集中する部位(末梢神経、網膜、腎臓)で障害が起きやすく、これらで起きる合併症を糖尿病三大合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)と言います。また太い血管でも動脈硬化を促進させるので、脳血管障害(脳梗塞 等)や心筋梗塞、足の壊疽といった合併症が起こりやすくなります。その他にも免疫力の低下や傷の治癒が遅くなるなど種々の合併症を引き起こします。

治療について

1型糖尿病の患者様に関しては、不足しているインスリンを体外から補充するインスリン注射をしていき、血糖値をコントロールしていきます。

2型糖尿病の患者様は、生活習慣の見直しから始めていきます。食事療法として、適正なエネルギー摂取に努める(食べ過ぎない)、栄養バランスの良い食事をとるなどに気を付けていきます。また、インスリンの働きを改善させるよう運動療法を行います。運動療法については個人差がありますのでご相談ください。無理のない範囲で、継続的に行うことが重要です。

上記だけでは血糖値が下がらない場合は、併行して薬物療法を行います。この場合、経口血糖降下薬として、インスリンの分泌を促進させる薬や効きが悪くなっているインスリン(インスリン抵抗性)を効きやすくする薬、ブドウ糖の吸収を緩やかにする薬などが用いられます。それでも効果が乏しい場合には、インスリン注射が必要になることもあります。

脂質異常症

血液中に含まれる脂質の中で、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)と中性脂肪(トリグリセライド)が過剰になっている、あるいはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が少ない場合、脂質異常症と診断されます。具体的な診断基準は次の通りです。

  • 高LDLコレステロール血症:LDLコレステロールの数値が140mg/dL以上
  • 低HDLコレステロール血症:HDLコレステロールの数値が40mg/dL未満
  • 高トリグリセライド血症:トリグリセライド(中性脂肪)の数値が150 mg/dL以上

脂質異常症は3つのタイプに分類されますが、いずれのタイプであっても血管内でLDLコレステロールを蓄積しやすくさせます。これが動脈硬化を促すことになります。動脈硬化が進行すると血管狭窄による血流の悪化、血管の閉塞などを引き起こし、やがて脳血管障害(脳梗塞 等)や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの重篤な合併症を発症するリスクが高まります。自覚症状はなく、上記のような合併症が現れた時に初めて気付かれることもあります。そのため、定期的に健康診断を受けて確認をすることが重要です。

発症原因の多くは生活習慣や肥満の影響であることが多いですが、遺伝性や他の疾患に起因する二次性のこともあります。

治療について

治療の目的は、血中の脂質を適切な範囲内にコントロールし、合併症の発症予防や進行抑制をすることです。生活習慣に関わることが多く、まずは食事療法、運動療法といった生活習慣の改善が第一です。食事療法としてはコレステロールを多く含む食品(卵類、乳製品、レバー、魚卵など)を摂りすぎないようにし、摂取エネルギー量についても多くなりすぎないよう注意が必要です。また、糖質が多くなると中性脂肪が上がりやすくなることが知られています。また、運動療法も効果的です。ウォーキング、水泳などの有酸素運動を中心に1日30分以上行うことが推奨されています。

生活療法のみで脂質異常症の改善が困難と判断される場合には、併せて薬物療法も行います。患者様の脂質異常症のタイプや基礎疾患、内服状況に合わせて適切な薬剤を選択してきます。内服の治療が副作用や効果の面で難しい場合には注射剤を使用することもあります。

高尿酸血症

高尿酸血症とは、血液中に含まれる尿酸が過剰になり、血清尿酸値(血液中に含まれる尿酸の濃度)が7.0mg/dL以上となった状態のことを言います。尿酸値が高い状態が続くことで痛風発作(足の親指の付け根などに尿酸の結晶が蓄積し激痛を招くこと)が起きやすくなったり腎臓の機能に異常が出たりすることがあります。

尿酸値も生活習慣に大きく関わっていることが明らかになっています。そのため、まずはやはり生活習慣の改善が治療の柱となります。食事療法としてはプリン体を多く含む食品(レバーやカツオ・イワシなどの魚介類など)を摂りすぎないように注意します。肥満は尿酸を上げやすくするので、適正なエネルギー量の摂取に努めます。アルコール摂取が増えると尿酸値が上昇することが知られており、節酒も必要です。運動療法は肥満を是正することで尿酸値を低下させることができると考えられています。特に有酸素運動は尿酸値を下げるのに有効です。適切な運動の強度は患者様により異なりますが、無理のない範囲で継続的に行うことが重要です。

治療について

上記のように食事運動療法が第一の治療となりますが、効果が十分でない場合には、尿酸値を下げる効果のある薬(尿酸生成抑制薬、もしくは尿酸排出促進薬)も併用していきます。